スケボーにブレーキはない。

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大人になって、心から学んだことがいくつかある。



今日は、スケボーの話をしたいと思う。







2年くらい前、わたしはスケボーにはまっていた。



その頃わたしは、サーフィンに乗れるようになりたくて、体幹を鍛えるためにスケボーを始めた。





サーフィンのために始めたことだけれど、スケボーはサーフィンと違って、波に飲まれることがないし、



なにより乗っていられる時間が長いので、わたしはすぐに好きになった。



どこかへ遊びに行くときは、いつもスケボーを持っていって練習した。







スケボーにも普通に乗れるようになってきた、ある夏の日、



わたしは友達と遊びに出かけ、ある見晴らしのいい場所に連れて行ってもらった。



そこは、冬場スキー場として使われている場所で、夏場は自由に開放していた。



その日は平日のせいか、わたしたち以外に誰もいなかった。





スキー場の端の方には、歩道のようなアスファルトの道があった。



坂に沿って、長い歩道がずっとつづいている。



それを見て、少し抜けていたわたしは、



「ここ滑るのにぴったりじゃん!!」と思った。



ちょうどその時も、スケボーを持ってきていたので、



友達に「ちょっと滑るの見ててー!!」と言って、滑ることにした。









どこまでも続く坂道を見て、とてもワクワクしていた。



わたしは、デッキの上に片足を置き、もう片方の足で思い切り地面を蹴り、坂道を滑りだした。











道路もきれいだし、順調な滑りだし。



スピードがついてきて、風が気持ちいい。



どんどんスピードが上がっていく。



坂道だから、乗ってるだけで加速して楽ちんだなー。



そう思い、そこで気づいた。



「あれ、スケボーってブレーキがない。どうやって止まるんだっけ?」



背筋が凍った。







わたしは坂道での減速方法も知らず、



スケボーに乗るという、大失敗を犯してしまったのだ。











そこまで急な斜面でなければ、足でブレーキをかけることができる。



でも、それを気づいた頃には、坂で加速し過ぎてしまっていて、



足でブレーキをかけることなど、到底できなかった。



どうしようか考えている間にも、どんどん加速していく。







もう、これ以上スピードが出ると本当にやばい、大変なことになる。



そう思った。



何秒も考えている時間はなかった。









とっさの判断で、わたしはスケボーから飛び降りた。



降りると同時に、やはりスピードが出すぎていたので、



わたしは派手に転び、アスファルトに身体を打ち付けられた。









痛すぎて、しばらく動けなかった。



倒れたままでいると、友達が駆け寄ってきて、怪我の具合を調べてくれた。



骨折かなにかしていると思ったのだけれど、肘と膝とお腹に、ひどい擦り傷があるだけだった。



「あれだけ派手に転んだのに、これで済んでよかったね、、」



友達にそう言われて、わたしもそう思った。



その時の傷は今も残っている。











この出来事で学んだことというのは、



普段人は、自転車でいうならブレーキのようなものを使っていて、



坂道の本当の恐ろしさだとか、身ひとつになった時に、自分がどれだけ無知かということを知らない。





「スケボーにはブレーキがない。」



「坂道で乗り物は加速する。」





こんなこと、当たり前のことなのかもしれない。



だけど、わたしはこれを、死ぬ思いで「体験」したのだから、



こういうことを「本当の学び」と言うのだと思う。









この体験のあとから、わたしは、



なにかをする時には、もっと気をつけよう、と思うようになった。



スケボーとは関係ないけれど、波の強い海で遊ぶときも、気をつけるようになった。














人生において人は、



失敗をすることや怪我をすることを避ける。



失敗したくないから、人の助言を聞く。





でも、わたしはあの時初めて、



スケボーにブレーキがないことに気づいたように、



教科書や誰かの言ったことではなく、



自分の体験を通して学んでいきたい。







自分で思うようにやってみて、



失敗したり、転んだり、痛い目に逢ったりしながら、



そうやって、自分なりの「答え」を見つけていきたい。











わたしはこれからも、



「本当の学び」をしていきたい。