浮世

                      ☆









日が昇ったあとに寝て、







日が沈むころに起きた。







真夜中に、ヒルトンホテルにチェックインして、







大音量で音楽を聴いた。







朝も夜もルームサービスで、







毎日好きなものを食べた。







洗濯なんてしない。







下着も靴下もぜんぶ、ホテルに出した。














楽しかったけど、もううんざり。





食べ過ぎて嫌いになった食べ物みたいに、





今思い出すと吐きそうになる。















朝に起きたくなった。







夜に寝たくなった。







掃除したくなった。







洗濯したくなった。







料理したくなった。













わたしが望んだのは、小さなこと。





小さくて、そして大きなこと。
















浮世離れも楽しいけれど、





それは少しのあいだ。





浮世に生まれたわたしたちは、





いつか浮世が恋しくなるから。