エジプト日記3☆「あなたは、あなたでいればいい」

          ☆







今日は、ダハブにいた時の日記。



ダハブは紅海沿いにある海の町で、世界中から、たくさんのダイバーが集まってくる場所。



今日の日記は、ちょっとポップな感じで!!☆彡











第5話  ジーとの出会い





ジーとは、ホテルの送迎バスの中で出会った。



その時宿泊していたメリディアンホテルは、街の中心地から離れていたので、



街に用のあるときは、毎回送迎のバスに乗らないといけなかった。



ちなみに、メリディアンホテルは、国際的に展開する5つ星ホテルなのだけれど、



ダハブだと1泊たったの5千円で泊まれる。



(これはこのホテルに限ったことではなく、エジプトはホテルが安い。)



広大な敷地に、プールも5つくらいあるし、プライベートビーチもある。



東京のリッツやヒルトンなどは、1泊余裕で4万円以上するけれど、



正直言って、そこらの都内の5つ星ホテルより、ずっと良かった。



あんなに素晴らしいホテルが、日本のビジネスホテルより安いなんて信じられない。



ホテルや宿泊施設に関して、エジプトは本当にコスパがいい。







話を戻そう。とにかく、同じ送迎バスの中に、同い年くらいの男の子がいて、



どこから来たの?とか、いつまでいる予定?とかいう話を、どちらからともなく話し始めた。



ニューヨークから来たという彼の英語は、アメリカ人の中でも、かなりアメリカっぽい英語で、



しかも今時の女の子っぽい英語で、Sex and the city のキャリーやサマンサが頭に浮かんだ。



10分ほど経って、街の中心地に着くと、私たちはバスを降り、連絡先を交換して別れた。







しばらくして、紅海の美しい海を眺めていると、彼から、



「ハイ!名前を言うの忘れてたね!あなたの名前は?」とメッセージが届いた。



どうでもいい話ばかりしていて、お互い名前すら名乗っていなかったことにその時気づき、なんだかおかしくなった。









彼の名前はジー。



ジーとは、オランダ語で「海」という意味らしい。



「海」と海の町で出会えるなんて、なんだか素敵だと思った。












第6話  ジーとの会話






ジーとは、地元のパーティーに一緒に行ったことが、きっかけで仲良くなり、



ダハブにいる間は、ほとんど毎日会ってた。(ジー曰く、そのパーティーは超最悪。)



同年代だったということもあるけど、彼といると、気の置けない女友達といるみたいでホッとした。







ジーとは、エジプトの宗教観の話から、彼の将来の夢の話、



映画トワイライトのエドワードとジェイコブ、どっちがタイプかという話まで、いろんな話をした。







ちなみに、トワイライトに関して少し語ると、あの頃ティーンだったすべての女の子にとって、



エドワードとジェイコブ、どっち派かっていうのは、



ビーチボーイズの時、竹野内豊と反町隆史、どっち派か、(世代じゃないけど)



大統領選の時、ヒラリーとトランプ、どっち派か、(ちょっと違うか笑)



というのと同じくらい重要な問題だ。





(もちろん、日本で一番カッコイイのは竹野内豊に決まっているし、



トワイライトで一番カッコイイのは、エドワードに決まってる!!)





話を戻そう。とにかく、ジーと話した、そんないろいろな話の中で、



とても印象に残った話があったので、今日はそれを紹介したいと思う。







私はその頃、あることが心に引っかかっていた。



それは、それまで一緒にいたアシュリンの言動で、どうしても分からないことだった。



私はそれが、欧米や西洋独特の文化のようなことだと思ったので、



アメリカ人のジーの意見を聞いてみようと思った。







それはどんなことかと言うと、彼と私が思う「面白いこと」の違いだった。



アシュリンはジョークを言うのが好きらしく、よくジョークや「面白いこと」を言うのだけれど、



私にはそれが面白いどころか、全く理解できないのだ。







皮肉っぽかったり、曖昧だったりして、分かりやすい冗談ではないし、



それどころか時には、その冗談が不快になることすらあった。



彼とはその「面白いこと」を巡って、何度か話し合いになる場面もあったし、



それに私は、彼の冗談が分からないたびに、疎外感というか、



何で私は、こんなことも分からないんだろう!というような気持ちになった。



(あとで他の人に聞いたら、それはイギリス流のブラックジョークらしかった。)







この時の状況を説明するような、ある出来事を1つ紹介しよう。



ある日、彼はいつものように、よく分からないジョークを言った。



長くなるので、その内容は紹介しないけれど、



それは、本気で言っているのか、冗談なのか分からないような、曖昧なブラックジョークだった。



私はその時、それが冗談だとは分からず、全く状況が読めなかったので、



「それ、本気で言ってる?」と聞いた。



本気で言っているとしたら、人間関係が壊れるような言葉だったからだ。



すると彼は、「これはジョークだよ!こういう時は、ジョークで切り返すんだよ!」



と呆れた感じで言って天を仰ぎ、そして最後に、



「ジョークのない人生なんて、つまらないよ…」とボソッと呟いた。







そう言われて、私はなんだか気分がとても落ち込んできた。



彼の「面白いこと」が分からなかったのは、今回が初めてじゃない。



それに、「ジョークのない人生なんて、つまらないよ」と言った彼の言葉が、



「ジョークのない君の人生なんて、つまらないよ」と頭の中で翻訳され、



彼のジョークも理解できず、気の利いたジョークの1つも言えないなんて、



もしかしたら私は、この世界で、世界一つまらない女の子なんじゃないか、



という気持ちがしてきたのだった。











そしてそのことが、彼が帰国したあとも、



何故だか、ずっと心に引っかかっていた。









一連のジョークの話をジーに話すと、



"What the fuck is this joke!!!??"(なに、そのクソみたいなジョーク!?)



と言い、そんなジョークを言われたら、相手にこうしなさいと、私の中指を立てさせた。



「いい、何が面白いかどうかは、人それぞれでしょ。



私は彼のジョークを面白いとは全く思わない。



それに、私とあなたの間では、一度もジョークを使ってないでしょ。



だけど、私たちは、もうたくさん笑ってる。



人間関係で一番大切なのは、楽しむこと。



わざわざ面白いことを言うことではないの。



無理してあなた以外の人になる必要はないの」











そして最後に、ジーははっきりと、こう言った。



"You just need to be yourself. " ( あなたはあなたでいればいい。)











ジーにそう言われて、私はハッとした。



私はあることに気づいたのだ。









私は究極的には、彼のジョークを理解できるかとか、他の国の文化を理解できるかとか、



そんな薄っぺらいことを、気にしていたのではなかった。



それはベールを被せたようなもので、本質はもっとずっと下にあった。











私が気にしていたこと、それは、



相手がどうであれ、環境がどうであれ、相手の顔色を気にせず、



自分らしくいられるか、ということだった。









笑いたいときに笑う。笑いたくないときには笑わない。



面白いことは面白い。面白くないことは面白くない。



私はこう思う。私はこう思わない。









そんな単純なことだけれど、その時の私には難しかった。













ジーに言われたことは、どんな状況でも言えることだろう。



学校で、会社で、親しい人や、好きな人との間で、



環境や国、文化の違う場所で、



多くの人の意見があるところで。













頑なになる必要はないけれど、



ジーに言われたことを、どんな時も忘れないようにしようと思った。















"You just need to be yourself."  あなたは、あなたでいればいい。